観音妙智力

 観音の旅をされている方々は、皆様「南無観世音菩薩」や「オン・アロリキャ・ソワカ」、また「オン・バザラ・ダラマキリク」等とお唱えされておられますね。この声は観音様に本当に届いているのでしょうか。
 観音様は、皆様がお寺の本堂の前で手を合わせ、唱える真言やお経だけを聞いておられる訳ではございません。観音霊場の巡礼の旅をしようと心に決め、歩み始めた時からずっと、皆様の事を見ていらっしゃるのです。
 中国観音霊場におきましては、三十三ヶ寺と特別霊場四ヶ寺がございますが、その一つ一つのお寺を参拝するには、マイカーやバス、または歩いて回られる方もおられるでしょう。どの様な巡礼の仕方であっても、観音様はその一人一人のスタートからずっと見守って下さっているのです。そしてその様な方々が何か助けを求めた時は、すぐに救って下さいます。人々の行動を常に見守っていらっしゃるからこそ、発する言葉も含めて、音を観る菩薩と言われるのでございましょうね。
 「困った時の神頼み」という言葉がありますが、その時だけ「助けて」の声を聞いて下さるのなら「観音」という名前にはならないでしょうし、言葉を発する以前の日々の行いが、いかに重要であるかおわかりでしょう。良き行いを積んでおられる方が「南無観世音菩薩」とお唱えして、初めて救済の手を差し伸べて下さるのです。
 観音様は慈悲の仏様と言われておりますが、慈悲とは、他人の苦しみを拭い去り、他人の喜びを自分も同じように心から喜ぶということです。普段から慈悲深い人であれば、例え体が不自由で、観音巡拝が出来なくても、観音様に見守られ、救いの手がさしのべられることでございましょう。観音霊場の旅に、心を無にして、素直な心で是非お出掛け下さい。霊場を全て巡礼された時「観音妙智力」が得られ、不思議な経験をされる方もございましょう。観音様は、その様な大変有難い仏様でいらっしゃいます。皆様の心の旅が素晴らしい旅になります様、一ヶ寺の僧侶として念じております。  合 掌

第5番札所 法界院 住職 橋本 春明