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根本堂に懸けられている室町時代の絵馬にこんな逸話が語り継がれている。
ある日、日頃信仰熱心な信徒が観音さまにたいそうなお蔭を頂いたのでお礼にと一枚の絵馬を奉納した。この絵の馬があまりにも見事に画けているので人々は「まるで生きているようだ」と口々に絶賛していた。
この絵馬が奉納されたころから毎夜毎夜、里の田畑が何者かに荒らされるようになった。人々が犯人を捕えようと寝ずの番をしていると何処からともなく一頭の馬が現れ、田畑の中を勢いよく走り始めた。ひとしきり駆け回った馬は気晴らしがすんだかのように静かになりお寺の方に歩き始めた。
何処に帰るのかと後をつけてみるとこの馬は清水寺の根本堂に掲げられた、あの立派な絵馬の中に収まってしまった。
里の人たちはこのありさまを見て腰を抜かさんばかりに仰天し、すぐさま住職にこのことを話して馬が絵馬から抜け出ないようにしてくれと懇願した。
住職はこの話を聞くと、即座に座を立ち小僧に命じて筆を持ってこさせ、絵馬の中に杭を画き、その杭から馬のくつわに向かって紐を描き足した。そして人々に『どんなに姿美しいものでも、戒めを持たぬものは社会に害を及ぼす。私たちは常に観音様の御教えを心の戒めとしなければならない。』と説き、今日からこの馬は観音様の戒めを頂戴したので決して田畑を荒すことは無い、と約束した。
住職の約束通り、これ以後絵馬の馬は決して暴れ出ることは無かったそうです。
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