

洞春寺開山嘯岳禅師は、学識高揚の大徳であった。生前の毛利元就は師の名を慕い、しばしば城内に招いて聞法した。 この二人の問答の記録が洞春寺に伝わっている。それには、元就が「仏法に武勇を振るう術があるか」と問うたのに対し、嘯岳禅師は「仏法に戦の事あるを聞かない。人は戦に勝って自ら天下を安んぜんとするが、それは誤りである。諺にも『天下は天下の天下である』と。畢竟、大乗の善心にまかし、大慈悲心を以って天下を征すれば、将軍の踏む処は中道実相である」と説いた。 元就が子孫に残した遺訓は「天下を競望せず」であった。元就は晩年、戦乱で散った敵・味方の霊を供養する為に嘯岳禅師に法華経の読誦を頼んだ。元就の御願文にも「法華経は諸仏出世の本懐にして衆生成仏の直道なり」とある。経典は八巻で一部、一部読むのに一日かかり、当時は、百人の僧が十日間かかったという。現在は、四月十日から十三日迄催され八巻だけであるが、それでも十二・三人で唱和し、長州法華と呼ばれる独特な読み方で本堂を揺るがすほどである。 これが、創建当時より四百年以上続いている『法華経千部会』という行事である。 |
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第十六番札所 洞春寺 住職 日下元精 |