
| 千光寺の玉の岩 |
| 昔々のその昔な、尾道の大宝山(千光寺山)に夜になるとピカーピカーと光り出す岩があった。そりゃあのう、遠い海の向こうからでもよう見えた。船頭たちは目印があるんで安心して舟を漕ぐことができたんじゃ。今でいう灯台の役目を果たしとったんじゃな。 ところがのう、この光る玉のことが中国まで聞こえての、皇帝がどうあってもその光る玉を持って帰れと命じたんじゃ。遠い中国から船で何人も乗って来たんじゃが、何十年探しても見つからん。仲間はみんな病気やけがで死んでしまい、とうとう二人だけになってしもうた。髪は伸び放題、目だけがぎょろぎょろと光っとった。 ある月夜の晩じゃ。二人はもう諦めて舟を浮かべて横たわっとった。一人はいびきをかいて寝込んでおった。するとな「ピカーピカー」と光るもんが見えたんじゃ。 「あれは光る玉じゃあないか!」 そう言うと、うつらうつらしとった男は、慌てて隣で気持ちよさそうに寝とる男をたたき起こした。たたき起こされた男は、何がなんだか分からん。寝ぼけ眼をすりながら言うた。 「ありゃあ!とうとう夢にまでみるようになってしもうた。じゃが、夢にしてはよう光っとるのお」 そして、ほっぺたをつねって又言うた。 「まちがいない光る玉じゃ!」 波飛沫を浴びながら、二人は必死で漕いだ漕いだ。光る玉に向かって、ぎいこ、ぎいこと漕いだんじゃ。岸に舟をつけると、我先にと林の中を駆け上がって行った。息をはずませて登って見ると、大きな岩の先が光っとる。 「光る岩じゃ、光る岩じゃ」 「とうとう見つけた、やっと見つけたぞ!」 二人は抱き合って喜んどったがの、そのうちホッと安心して、くたびれがいっぺんに出てきたんじゃろう。大岩にもたれ、足を投げ出して寝てしもうた。 あくる朝、二人ははしごを作って岩に登り、先っちょの光るところをのみでくり貫いた。 「これでやっと中国へ帰れる」そう言うて、二人は喜び勇んで光る玉をかついで山を降りた。 ところがな、舟に積もうとした時、きゅうに舟が傾いたんじゃ。 どぼ〜ん 「ああああ〜」 光る玉はきらりきらりと光りながら、海の底に沈んでしもうた。二人はあわてて海を覗き込んだが、あとのまつり、どうすることもできん。光る玉は、今でも海の底に沈んどるということじゃ。それでこの辺りのことを玉の浦と呼ぶようになったんじゃと。 光る玉がなくなって、困ったのは土地の人たちじゃ。船の道しるべがなくなってしもうたんじゃからな。仕方なく、岩の上で、毎晩かがり火を焚くようになった。今は電気で七色に変わる玉がはめてあるがの、わしのじいさんが若い頃、はしごを掛けて登ってみたときにゃあ岩の先に穴がぽっこり空いとって、火を焚いたあとがあったと言うとった。 今でもその伝説にちなんで、この烏帽子の形をした岩を「玉の岩」と呼んどる。 玉の岩は尾道の象徴じゃよ。 |
| 第十番札所(広島県尾道市) 大宝山 権現院 千光寺 |