
| 浄土寺血天井(本尊身代わりに立ち給う) |
| 応永(室町時代)の頃のお話です。尾道に住む2人の男の間に生じたある事件がきっかけでした。 それはある男がもう一人の男の妻と密通し、それが発覚。憤った男は「密通した男をたやすく討たしめ給え」と観音様に日々参詣して祈りました。するとそのことを知った密夫は大いに驚き、反省をこめて「急難を救い守護し給え」とこれまた観音様に祈ったのです。 そしてその数日後、密夫をはやく討たんと祈っていた男は終にその密夫と遭遇。男は願い叶えりと密夫に斬りつけ、大いに喜んで自宅に帰ったのでした。 ところが不思議や不思議。先程斬りつけた密夫が前を歩いているのです。刀を見れば血に染まっています。まさかと思いながら彼の死体を探しても見つかりません。 思い余って、不審に感じた男は密夫の家まで行き、事の次第を告げますが、密夫は自分も観音様にお詣りしたがあなたには会っていないと言うのです。 狐につままれたような思いで男は浄土寺に参詣し、堂内を見れば、そこに点々と血は床に落ち、観音様の厨子の中に続いているではありませんか。そこで男は住職に懇願し、扉を開けるとそこにはかにじけなくもあの観音様に左肩より脇の下まで刀痕があり、血は泉の如く沸いているお姿があったのです。やがて密夫もかけつけ、2人して観音様のお姿に目もくらみ、互いに涙を流して礼拝懺悔を行い、各々の心に遺恨なくそれぞれに信心を深めるに至ったというのです。 観音様の血に染まった床板は、血天井としても今も観音堂裏の天堂(聖天)に祠られています。 |
| 第9番札所(広島県尾道市) 住職 小林海暢 |